既存の建築物の構造的強度を調べ、想定される地震などに対して、適正な安全性(耐震性)を保持しているかを確認する業務です。地震などによる建物の倒壊や損傷の可能性を事前に把握し、危険性の有無を把握することが目的です。
診断にあたっては、過去に世界で起きた実際の大地震の地震波のデータ(東京101、エルセントロR、タフト等)を用いる方法も幅広く行われています。
耐震診断の結果によっては、耐震補強などの必要性を判断し、耐震性を高める改修を可能とします。
一般的には構造耐震指標Is値が構造耐震判定指標Iso値以上であれば、「安全」(想定する地震動に対して所要の耐震性を確保している)」とされます。Isoは一般的に第1次診断法の場合は0.8、第2次・第3次診断法の場合は0.6ですが、地域、地盤及び用途によって補正されます。また、第2次・第3次診断法では、累積強度指標CT・SD値が0.3以上であることも求められます。
耐震診断には、以下の3種類があります。
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第1次診断
比較的耐震壁が多く配された建築物の耐震性能評価を目的とした診断法です。最も簡便な方法で、対象建物の各階の柱・壁の断面積とその階が支えている建物重量から構造耐震指標を評価します。比較的壁の多い建物には適していますが、壁の少ない建物では耐力が過小評価されます。設計図面が残っていて、現在もその設計に基づいた建物が維持されていれば建物の詳細な調査を行わなくても短時間で計算できる場合があります。 -
第2次診断
梁よりも、柱、壁などの鉛直部材の破壊が先行する建築物の耐震性能評価を目的とした診断法で、この場合、梁の強度は考慮しません。設計図面が残っていて、現在もその設計に基づいた建物が維持されていることが前提です。各階の柱と壁のコンクリートと鉄筋の寸法から部材の持つ終局耐力を計算して、その階が支えている建物重量と比較します。その他2種要素、極短柱、下階壁抜け等の検討をします。コンクリートの圧縮強度・中性化等の試験、建物の劣化状態(ひび割れ・漏水・鉄筋錆・コンクリート爆裂)などの調査が必要となります。第1次診断より結果の信頼性が高く、公共建築物(学校・庁舎等)で最も多用されています。この方法で補強を行った建物は、近年の新潟県中部地震などでも被害があまり報告されていません。想定地震力は400gal程度といわれます。(保有水平体力計算は1000gal)。 -
第3次診断
柱、壁の強さと粘りに加え、梁を考慮した診断方法です。設計図面が残っていて現在もその設計に基づいた建物が維持されていることが前提です。2次診断の柱と壁に加えて梁も考慮して計算する、現行建築基準法の保有水平耐力計算とほぼ同程度のレベルで建物の終局耐力を計算する方法ですが、保有水平耐力計算の計算上の仮定に最も左右されやすい性格を持ちます。計算結果通りに建物が終局耐力に達するか否かについて、十分注意して判断する必要があります。高層建築や鉄骨造が対象となる事が多い診断方法です。
現地調査項目例
- 図面と建物の照合調査
- 敷地形状など周辺状況調査
- コンクリート強度調査(コア抜き)
- コンクリート中性化試験(フェノールフタレイン液調査)
- 鉄筋腐食度調査
- 鉄筋径、かぶり厚さ測定
- 不同沈下調査
- 鉄骨実態調査
- 超音波探傷試験調査